コレですっ!
全ての電解コンデンサーやペーパーコンデンサーを一気に今時のモノにリキャップしました。
日本製ラジオの線材の硬化問題
今回のリキャップ中で一番困ったのはこの問題です。
私は今までアメリカ製のラジオを数台整備して来て線材が硬化してるとか感じた事は殆どありませんでしたが、しかし今回初めて日本製の古いラジオを整備してこの問題に直面しました。
線材の表面にニスか何か塗ってあるのでしょうか?どうやらそれが硬化して古い配線を弄ろうとした時線材の表面がボロボロと崩れてしまうのです。線材芯線自体は大丈夫なのですが表面が崩れてしまうのは気持ちの良いものではありません。
よって今回のリキャップに当たって、古い線材は可能な限り動かさない様にして温存し、どうしても弄らなくてはならない線材だけは新しい線材に交換するというやり方にしました。
この「古い線材は可能な限り動かさない」という事は実はとても厄介で、今回の「コンサートン RM-5」の様に回路図が無い場合、配線を調べる為に線材を少し動かして結線を見るという作業が出来ないのです。テスターで当たるにも線材が動かせないとテスターピンが入らないし。
しかしそれでも何とか回路図の概略図を自力で作り上げ、それを頼りに作業を進める事になりました。
コンデンサーの値が判らない
電解コンデンサーの値は部品に書かれていた値で判ったものの、ペーパーコンデンサーの値は記述が無く判りませんでしたのでネットで古い「並四ラジオ」や「高一ラジオ」の回路を調べまくり、妥当な値「0.1μF」を見当つけました。
電解コンデンサーはオリジナルでは全て「2μF」を使っている様なのですが、今回の私の計画では同時にハム音対策も行うつもりだったので色々検討した結果「10μF」と「22μF」を使う事にしました。
例によって整備の為に使った20AWG単線極太オレンジ線材は70年前のビンテージもので、コンデンサーのエンパイアチューブもその線材の被覆を剥き出して使っています。ラグ板もこのラジオに似合う様に敢えてビンテージ大型ラグ板を使い、コンデンサーはチューブラー型ポリプロピレン、電解コンデンサーも敢えて縦型は使わずチューブラー型を使うという拘りの部品達です。
整流管「KX-12B」の整流回路の最初の電解コンデンサーは最大でも「4μF」に抑えねば整流管を痛める可能性があるらしいのですが、私は敢えて「10μF」で行きます。チョークの前後は安全の為に「10μF」を使いますが、次段以降は「22μF」を使い、またCRパイ型フィルターもオリジナルより1段多く構成して万全の構えです。
何としてもハム音は無くしたかったからです。
電源コードも新しくしました
オリジナルで付いていた「丸打ちコード」は結構傷んでいたので今回コレも新品に交換しました。
ただ、古いラジオは「丸打ちコード」を使っている事が多い様ですが、私には理由が判りません。これって曲げるのが硬くて扱いづらいです。だから痛みも早い気がします。
なので私は今回「袋打ちコード」を使いました。これはレトロ感もあって曲げやすくて扱い易いです。
リキャップは大成功です
今回のリキャップ作業は本来1〜2時間位で完了出来る位の内容なのですが、私的にとても丁寧に作業を進めたので丸1日掛かってしまいました。お陰で失敗した箇所も無く、最後まで自分が思う理想的な作業が出来、冒頭の写真にもある様に自分なりにとっても綺麗にリキャップ出来たと思っています。
ハム音は残った
残念ながらハム音は解決する事は出来ませんでした。放送を聴いている時にはそれ程ハム音は気にならない程度ですが、それでもやはり結構聞こえてきます。
電源を入れた瞬間から2〜3秒位「低いブ〜ン」という電源ハム音が聞こえ、その後「低いぶ〜ん」音は聞こえなくなり、代わりに「高いブ〜ン」というか「ジィ〜」というハム音が聴こえる事から下記の実験を行って原因を調査してみました。
電源ハム音ではない?
まず、整流回路に少し大きな容量のコンデンサー等を追加してみてもハム音の具合が全く変化しなかった事と、電力増幅管「UX-12A」や低周波増幅管「UX-26B」のグリッド入力をアースした時ハム音がかなり減少した事などから、電源ハムの影響は少ないと判断をしました。
前述した様に、オリジナルより少し大きな値の電解コンの使用や、CRパイ型フィルターを1段追加した事等により、電源ハムを抑える事には成功していると思います。
ヒーターハム音ではない?
この「コンサートン RM-5」は「UX-26B」「UX-12A」が直熱感なので、ヒーターハムか?とも疑って実験でヒーターのハムバランサー回路の電解コンデンサーに容量の大きなモノ追加してみましたが、これも全く変化が無く、原因はそれでも無さそうです。
ハム音はその他の原因?
今の処、配線の引き回し方や、アースポイント、アース天ぷら等々の問題ではなさそうで… というかこれらは完全にオリジナルのままなので、もしこれが原因ならタイガー電気の設計ミスと言う事になり、それは有り得ないと思います。
ちなみに、高周波増幅回路にある感度ボリュームを回転するとラジオの音量が変化するが、その時当該ハム音の音量は変わらない事などから高周波増幅回路、再生検波回路系でハムが混入しているとは思えず、私的には何と無く音声増幅回路の「UX-26B」「UX-12A」どちらかの ST管の劣化かな?なんて感じていたりもします。
しかし現在それらの球の手持ちが無く検証が出来ないので、入手出来次第確認してみようと思います。
まっしかし「戦前の古い ST管ラジオはこの程度のハム音が出るのは当たり前」という感もあるので、この程度のハム音は「コンサートン RM-5」を目の前にすれば全然許せちゃう世界なんですけどね。
「コンサートン RM-5」の底面には裏蓋が付いていてこれを外すと…
簡単にシャーシ裏にアクセス出来ます。簡単なチェックならこれで出来ちゃいます。
まとめ
これで古いコンデンサーの爆発等の心配も無く、この「コンサートン RM-5」を使う事が出来ます。
受信感度は抜群に良く、外部アンテナ端子にアンテナ線を接続しなくてもローカル局ならボリュームを絞らないとうるさい位に大きな音量で放送を受信し、音質が悪いと言われる「マグネチックスピーカー」でも実際に聴いてみると私的に結構良い音だと感じます。
これでハム音が無くなったら最高なんですけどね。
まっ、今から少しづつ要所要所をチェックして行って原因を探ってみようと思います。
では、また〜♡
その後のハム音対策
ハム音対策について「UX-26B」「UX-12A」周りを下記の項目で調べてみました。
- 高周波増幅管「UY-24B」のグリッドをアースしても、ハム音は変化無し
- 検波管「UY-24B」のグリッドをアースしても、ハム音は変化無し
- 電力増幅管「UX-12A」のグリッドをアースすると、ほぼ聞こえない程度のハム音まで減少する
- 低周波増幅管「UX-26B」のグリッドをアースすると、少しハム音は減少する
- 低周波増幅管「UX-26B」を抜いてしまうと、大幅にハム音は減少する
この事から判る事は、「UX-26B」と「UX12A」は少なからず電源ハムの影響は受けていて、「UX-26B」に乗ったハム音は「UX-12A」で増幅されてしまっている様です。
しかし、電源整流回路は十分なリップル除去が行なわれている筈なので、これが問題になっているとは思えず、そうなるとやはり直熱ヒーターハムの影響を受けているのかな?とも思います。
もしそうでなければ「UX-26B」と「UX-12A」の間にある「段間トランス」自体が電源トランス等の電磁誘導を受けているとしか思えませんが、それらは互いに鉄板で完全にシールドされているのでそれが原因とは想定しづらいです。
そうなるとやはり、このハム音と偶に混入する「ジー音」は低周波増幅管「UX-26B」の劣化によるものと仮定するのが私的に当たっているのかな?と思います。当該管の劣化によってヒーターハムが反映し易い状態になっているのでは?と考えます。
さて、ここまで原因が絞れれば、さらに詳細に原因を追求する事でこの程度のハム音は除去する事は可能と思いますが… これ以上チェックを進める為には「コンサートン RM-5」のオリジナル性を崩してしまう改造が伴います。
私的には、このハム音対策よりも「オリジナル性が重要」だし、何よりもラジオ本体を弄りすぎて壊してしまっては元も子もないと思うので、この件についてこれ以上追求する事は止め、「UX-26B」の劣化という仮定の結論を得て、現状のままで「コンサートン RM-5」の整備作業を完了する事と致しました。
後の判断は「UX-26B」を入手、検証してから考えたいと思います。
その後のハム音対策-2
今日は昨日のハム音対策チェックでやり残した事を実験としてやってみました。
- 整流後の B電圧にもう1段パイ型リップル回路を増やしてみました。
- 「UX-26B」のヒーターハムバランサーのコンデンサー値を22μFから44μFに増やしてみた。
低周波増幅間「UX-26B」を挿したハム音が大きい状態と、「UX-26B」を抜いたハム音が小さい状態のそれぞれの状況で、上記どちらの実験でもハム音のレベルは全く変化無しでした。
以上の実験から、やはり整流後の平滑回路は十分に平滑されていると確証出来たし、またヒーターハムバランサーのコンデンサー値も関係無いと判断出来たので、上記仮配線は無しとして元に戻しました。
そうなると、残る可能性はやはり…
低周波増幅管「UX-26B」の劣化としか考えられないという結論になりますが、はたして…
- 投稿タグ
- コンサートン RM-5
お見事ですね。
平滑の4⇔10μFは測定しても差が出ないので、どちらでもOKです。まあ、段数が効く分野です。
ブーン音は、波形が見れるとヒーターに起因するものかどうかは判りますね。
「平滑の4⇔10μFは測定しても差が出ないので、どちらでもOKです」
のご指導有難うございます。とても安心しました。
こういう時オシロがあると楽ですよね〜!
金無し、場所無しの私には未だオシロ買えませんが、いつかは買いたいと思います。
本格的なモノは置き場所ないので、中華製のコンパクトなやつを狙っています。